MIDNIGHT HERO

デラシネのブログ。明日へむかって。

渡辺えり、のん、小日向文世「私の恋人」観劇の記。見どころは?

のんちゃんの初舞台、オフイス三◯◯「私の恋人」を観てきました。

場所は、大野城市まどかぴあホール。

渡辺えりさんの貫禄、小日向文世さんの熟練と相まって、3人が見事なアンサンブルを奏で、圧巻の舞台でした。

これから、東京・本多劇場の楽日に向けて、よりブラッシュアップされていくことでしょう。

急遽、追加公演も決まって、チケットを取り損ねた方も、もう一度観たい方も、ワンチャンスが巡ってきたわけです。

見どころは、どこ?

原作は、芥川賞作家・上田岳弘の同名小説。

私はまだ読んでいないのだが、時空を超えて展開する、純文学ともSFとも分からないジャンル規格外、という作品のようだ。

渡辺えりさんは、この小説を舞台化しようとしたいきさつを次のように書いている。

いない人物に命を吹き込み、生きた人を作り上げ、その虜になるというストーリーは、まさに演劇そのもの、演劇の虜になってしまった私たちそのものなのである。これを生の舞台として表現出来ればと強く思った。

(『私の恋人』公演パンフレット『渡辺えり挨拶』より一部抜粋。)

謂わば日常のリアリズムからは途方もなく乖離したこの小説の舞台化は、まず困難と考えるのが凡人の感覚だろうが、渡辺えりさんは、見事にそれをやってのけたと言えるだろう。

私の恋人 (新潮文庫)

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 芸術性の高さは、ある意味で一般受けはしない欠点ともなる。

しかし、だからこそ、劇場という小宇宙で、限られた観客を相手にする小劇場演劇は成立し得るのだ。

その作り手が、小劇場演劇というテリトリーを手放そうとしないのは、そこが自分の世界観を、ストレートに妥協することなく表現出来る場所だからだ。

その前衛的作風は、一般の観客が一見してすぐに腑に落ちるような作りにはなっていない。

そこで、のんちゃんのようなスーパーヒロインが小劇場の舞台を踏むことで、演劇の素晴らしさへの気づきを、多くの人にもたらすキッカケになってくれればよいと、私などは思う。

これが芝居好きの、密かなもくろみとも言える。

そこであらためて、この芝居の見どころを語ってみよう。

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 能年玲奈の初舞台。

のんちゃん推しの私としては、これは言うまでも無い。

あまちゃん」「ホットロード」以来の本格的女優復帰。

しかも劇場という生きた空間であるのは、ファンとしては嬉しい限り。

音楽劇であるから、ミュージシャンとして活動してきたキャリアも活かせる。

劇中で、アコースティックギターエレキギターを持ち替え、歌ってくれます。

渡辺えりさん、小日向文世さんの圧巻のパフォーマンス。

このおふたりの実力と経歴からすれば当然だが、渡辺えりさん、小日向文世さんの存在感は圧倒的だ。

この二人の掛け合いに、のんちゃんが絡むというお芝居は、想像しただけで、もう必見の価値がある。

踊り、歌い、自由自在に舞台空間を往き来する、それだけでも十分に楽しめる。

③3人30役の早変わりの演出。

時にはユーモアたっぷりの早変わり、その目まぐるしさ、それは変身願望を抱いている私たちにとって、ある種のエロスさえ感じさせる。

これもまた、見てのお楽しみの大きな要素だろう。

④戯曲に込められたテーマの深読み。

小説もこのお芝居も、登場する人物は古代のクロマニヨン人ナチス統治下のユダヤ人、現代の日本人と、時空を超えて個として存在している。

時間と空間に分断されたこれらの人物は、その隔絶された個としてまさしく孤立し、百億光年の孤独に苛まれ、喘ぎ苦しんでいる。

しかし彼らは、共通の「私」として繋がっており、共通の「私の恋人」という存在しない人物を夢想し、追い求めることそのものによって生かされている、宇宙の生命体としての人間を象徴するかのような存在なのだ。

この舞台の表現しようとする、宇宙の真理と人類史のような壮大なテーマを、観るひとがめいめい勝手に思い描き、空想の翼を広げることも、このようなお芝居を観る楽しみのひとつではないだろうか? 

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舞台の上に仕掛けられた、幾つもの地球と、時空を超えて往き来する天使たち。

 

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渡辺えりさんのこと。

今から9年前、私は「表に出ろいっ!」という故・中村勘三郎さんと野田秀樹さんの芝居を観た。

その日、チケットがなく、観に行くかどうか迷っていた私は、とある都心のレストランで遅い昼食をとっていた。

そこに、渡辺えりさんがご両親を連れて現れ、近くの席に座られた。

そのとき、客は私の連れと、渡辺えりさんのご家族だけだった。

渡辺えりさんの声は大きくてよく通り、私の席まで聞こえてきた。

えりさん曰く、ここは広くて綺麗で良いお店だという。

なるほど、と思った。

有名人になると、こういう隠れ家的お店が貴重なのだ。

えりさんは勘三郎さんの話を始め、山形のご両親を「表に出ろいっ!」の観劇に連れて行き、新幹線で帰途に着くご両親を、上野駅まで見送ろうとする途中なのだということがわかった。

その偶然が、私を劇場に足を運ぶきっかけをくれた。

行けば、必ず観ることができる、という直感が現実となり、故・中村勘三郎さんと野田秀樹さんの舞台は、私にとって一生の宝物となった。

その後押しをしてくれたのが、渡辺えりさんだった。

朝ドラ「あまちゃん」が放送されるのは、それから2年後のことになる。 

またしても渡辺えりさんは、私の好きな能年玲奈さんの復活に大きく貢献してくれた。

まさに「縁は異なもの」である。

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小日向文世さんのこと。 

小日向さんも私の大好きな演劇人の一人である。

お芝居で観るのは、今回で3度目。

最初は三谷幸喜さんの「彦馬がゆく」を渋谷のPARCO劇場で。

2度目は、同じく三谷幸喜さんの「国民の映画」を、福岡市のキャナルシティ劇場で。

もしかしたら、ほかにも知らないところで、たくさん観ているかもしれない。

「国民の映画」では、ナチスドイツの宣伝相・ゲッペルスを演じた。

三谷幸喜さんが、小日向さんを主役に立てて作った戯曲だ。

小日向さんの演技には、キレがある。セリフはもちろんのことだ。

そこが小日向さんの強みだ。

この「私の恋人」に参加してくれて、本当によかった。

渡辺えりさんと共に、のんちゃんを大きく成長させてくれることと思う。

今後も見続けたい役者さんです。 

国民の映画 (PARCO劇場DVD)

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本日は、これで終わりです。

また、これを機会にお芝居の話をしたいと思います。

乞うご期待。

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