MIDNIGHT HERO

デラシネのブログ。明日へむかって。

古風な歌。ドラマ「夢千代日記」と吉永小百合・平和への祈り。

 本日は、古風な歌、と題してお送りします。

最近、吉永小百合のドラマ「夢千代日記」 を観ました。

故・早坂暁さんを偲んで、NHK が再放送したのです。

そこでが流れていたのが、この曲。

最后のダンスステップ       あがた森魚

最后のダンスステップの歌詞

  

噫無情(レ・ミゼラブル)

噫無情(レ・ミゼラブル)

歌っているのは、あがた森魚と、女優の緑魔子

ドラマ「夢千代日記」で二人は、場末の温泉地のストリップ嬢と、小屋の照明係のあんちゃん役として、共演している。

ストリップの幕が開き、流れるのは「最后のダンスステップ」や「赤色エレジー」。

この名作ドラマにぴったりの、まさに、ハマり役だった。

あがた森魚は、ドラマの中で、この2曲を生歌で披露している。

初めてこの曲を聴く人は、この曲が 1974年に新進フォークシンガーが書いたオリジナル曲だとは、にわかに信じ難いのではなかろうか?

詞と曲、アレンジ、すべてが大正ロマン

今宵かぎりのダンスホール
あなたのリードで ステップ踏めば
お別れするのに夜会服が
何とか明日もくるくると

おいらめとろのつむぢ旋風
ソフトハットをなびかせて
シベリア·ケーキにお茶でも飲んで
ギンザのキネマに行きたいナア

踊ろうか 踊りましょう
せめて 今宵かぎりでも

あなたなんだかおセンチね
もうすぐ外地へお出征しね
あたしも最後のパアマネント
この髪乱して踊りたい

踊ろうか 踊りましょう
せめて 今宵かぎりでも

今宵かぎりのダンスホール
扉閉ざせば あすしれぬ
風立ちぬ いざ征かん
あすは 異邦のつむぢ風

踊ろうか 踊りましょう
どうせ 今宵かぎりじゃない

 

詞・曲  :  あがた森魚

外地とは、日本が戦前に植民地としていた、現在の中国や朝鮮半島支配下地域を指す。出征するというのは、そこで兵役に着くという事だ。

明日に出征を控えたモダンボーイが、おセンチにモダンガールと、ダンスホールで別れのダンスステップに興じるという、奇才・あがた森魚の面目躍如の名曲だ。

この曲が収録された「 噫無情 (レ・ミゼラブル) 」は、ベルウッドという当時のマイナーレーベルから出された、あがた森魚の第2弾アルバム。

あがたのセッションに参加しているのは、鈴木慶一率いる はちみつぱい

プロデュースは、松本隆

ベルウッド時代のあがた森魚の3枚のアルバムが、昨年、ベルウッド・レコード45周年記念の名盤として、最新リマスターで再発された。

あがた森魚の最高傑作とされるのが、このアルバムだ。

噫無情(レ・ミゼラブル)

70年代から80年代にかけて、NHK に「ドラマ人間模様 」という枠があった。

向田邦子の「あ、うん」、山田太一の「夕暮れて」「シャツの店」、早坂暁の「花へんろ」、そして「夢千代日記」などの名作ドラマを生み出したシリーズ枠だった。

今並べた名作は、ほとんどが今もDVD で観ることができる。

また、スカパー!  の「日本映画専門チャンネル」では、山田太一倉本聰の専門枠があり、過去の名作ドラマを再放送しているから、日本の名脚本家・ 黄金期の作品をかなりの数観ることができる。

その点では、本当に良い時代になったものだ。

かつてのテレビ局は BS もCS も無く、NHK を除けば いわゆるキーステーションであるテレビ朝日、TBS、日本テレビ、フジテレビの4局のみ。テレビ東京は、東京でのみ視聴出来るローカル局だった。

その上、福岡のような各地方の中心部には系列局が存在したが、更に田舎へ行くと、系列局が存在せず、東京の民放4局制作の番組を、ごった煮で放送するという地方局が多数存在した。

例えていえば、TBS のドラマの後に、フジの「夜のヒットスタジオ」が放送されるような具合に。

そんな時代であるから、過去の名作ドラマは、どうあがいても各地方局の再放送を待つしかなかった。

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(   山田太一さん。 )

私は山田太一さんを師と仰ぐほど敬愛しているが、ファンにとって、テレビ朝日や日テレは、過去の山田太一作品を再放送してくれたためしがなく、未だに観ることができない作品が数多くある。

これは、録画技術とフィルムの残存期間というテレビ側の問題もあるので、局側の事情により無い袖は振れないという事もあるだろうと思われる。

ところが、視聴率が取れる定番のドラマになると、しつこいくらいに再放送される。

それが、石立鉄男の「雑居時代」、村野武範の「飛び出せ!青春」、中村雅俊の「われら青春」などを持つ日本テレビ系列だった。

わりあい再放送が多いのが NHK とTBS で、フジも再放送はしてくれるが、それを逃すと再々放送は、滅多な事では期待できない。

要するにそれまでテレビドラマとは、一回切り観せるために作られる、テレビ番組の一ジャンルに過ぎなかった。 

そんな時代を経て、脚本家のシナリオ本が、数多く出版され、シナリオ文学と称されるという現象が起こった。

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左から、早坂暁向田邦子市川森一倉本聰。(敬称略)

70年代後半以降、向田邦子を皮切りに、倉本聰山田太一市川森一早坂暁など、後代まで鑑賞するに足る名作を、次々と送り出す脚本家が数多く現れた事が、その背景にあった。

出版業界は、それに素早く反応したが、ビデオソフト化されるドラマは当時のトレンディドラマが圧倒的に多く、刹那的に高視聴率を取ったものが優先された。

(ちなみに、ビデオデッキが一般庶民に普及したのは、1980年代中頃。これで、ようやくテレビの録画が可能になった。)

現在、朝ドラが毎回のごとく高視聴率を取っている。

低迷した時期を経て、これほどまでに隆盛を極めるに至ったのは、諸氏の作品を見て育った世代の脚本家やスタッフらが、作者をリスペクトし、その技術をパターン化するまでに盗み取り、マニュアル化するまでに至った事が大きいと思われる。 

「朝ドラ」一人勝ちの法則 (光文社新書)

「朝ドラ」一人勝ちの法則 (光文社新書)

ドラマ「夢千代日記」。

夢千代は、 山陰の湯村温泉置屋を営む芸者である。

彼女の営む置屋には、さまざまな事情を背負った女たちが、肩を寄せ合うように、儚い運命の波に翻弄されながらも生きている。

夢千代は、母親のお腹にいるとき広島で被爆原子爆弾放射能を浴びること)したため、血液のガンと言われる白血病を患い、座敷には出ているものの、常に病の影に脅かされ、余命幾年ともしれぬ身の上である。

夢千代は、そういう事情で、半年に一度、山陰から列車で神戸の総合病院に通う。

ドラマのオープニングは、表日本側のトンネルを抜けて、陽の乏しい裏日本の気候に覆われた山陰地方へ走る列車の音とともに幕を開ける。

そして、表日本から汽車に乗ってやって来る事情を抱えた者たちが、裏日本の小さな温泉町の駅に降り立つ場面から、物語は始まる。

まるで、奥村チヨの「終着駅」の歌詞のように。

そして、日陰に生きる者たちの、幸薄き人生模様が描かれてゆくのである。

共演者もまた、素晴らしかった。

秋吉久美子、中村久美、樹木希林加藤治子、夏川静枝、緑魔子あがた森魚....。

このドラマの吉永小百合を見ていると、美とは、切なさや儚さと表裏一体のものであるという日本人の感性を、色濃く表現しているように思える。

弱き者、虐げられた者たちの哀しき生の叫びが、山間の温泉町から漏れ聞こえてくる、そんなドラマである。

夢千代日記」について、吉永小百合自身が語っているエッセイがある。

吉永小百合―夢一途 (人間の記録)

吉永小百合―夢一途 (人間の記録)

昔、山陰の小さな温泉町に夢千代という芸者がいました。

ある日彼女は、ひいきのお客さんに連れられて、汽車に乗りました。山陰から山陽へ、汽車は山脈を越え、瀬戸内海へ出る。夢千代はまぶしい太陽のなか、身を乗り出して車窓を見ていましたが、やがて大きな島を見つけました。

「旦那さん、あれ外国ですか?」

その島は淡路島だったのでした。

旦那さんは、純情な夢千代のことをすっかり気に入り、妻に迎えたということです。

早坂暁さんは、その芸者さんの話をヒントにして、NHK のドラマ人間模様「夢千代日記」を書かれ、私が夢千代を演じることになりました。

暗く、寂しい人々が、山陰の鄙びた温泉町で織りなす人間模様は、何故か、ほのかな温もりがありました。

 

吉永小百合・著「夢一途」より。

 (貝殻節を踊る夢千代。)

 吉永小百合は、このドラマを機に、平和への想いを強くしてゆく。

原爆詞の朗読や、平和の尊さへの発言などは、脚本家・早坂暁とドラマ「夢千代日記」との出会いから始まったものだ。

その平和を願う活動は、吉永小百合さんのライフワークとして、今も続いている。

上は、オックスフォード大学での原爆詩朗読の模様。

第二楽章 福島への思い

第二楽章 福島への思い

下は、岸恵子さんと記者クラブでの会見。

ドラマは続編、新編と同じキャストとスタッフで制作され、好評を博した。

その後、最後の幕引きとして、映画化されることになる。

この申し出を受けて、吉永小百合は大いに揺れた。

それでも、彼女は映画女優だ。

惜しまれて終わる方が花だと思いつつも、やはり夢千代の最期を万感の想いをこめて、演じ切ろう、と心に決めた。

しかし、あとになって、夢千代の死を演じたことに、大きな悔いが残った。

この人だけは生きていてほしいと願う人が死んでいくのです。懸命に生きておられる被曝者の方たちにもつらい思いをさせてしまいました。

(中略)

百本の映画で、私は百人の女性を演じ、ああこの役はやるべきではなかったと後悔したことは一度もありませんでした。しかし、夢千代の死だけは悔いています。取り返しのつかないことをしてしまったという思いが、今も胸の中で疼いています。

 

吉永小百合・前掲 同著より。

私も、この映画版を観たが、ドラマとはキャストも大きく異なり、人物設定も似せてはあるが、まったくドラマ版の情緒が欠落していて、丸切り別物の、華のない映画になってしまっている。

映画ならではの、エログロ要素が随所に取り入れられ、吉永小百合がひとり、どんな清楚な夢千代を演じても、全体を台無しにしてしまった。

これでは、吉永小百合があまりに可哀想だと思えた。

ドラマ版では、ストリップ小屋の痩せ細った年増のダンサー役の緑魔子が、チラリとも肌を見せずに、濃厚なお色気を品よく見せているのに対し、映画では露骨に肌を露わにする女が、まるで家畜のように見えるのである。

色気というものもそうであるが、何ものも装飾を施していない生の現実を、そのまま見せてしまっては、身も蓋もない、品性のかけらも無いものに転落する。

露わな現実を、ロマンというオブラートに包み込み、リアルかつ夢幻のごとき芸術にまで昇華させる事こそ、本当の芸術家の腕の見せ所というものであろう。 

夢千代の死も、また同じで、露骨に見せるべきではなかった、ロマンの喪失であった。

あるとも思えない、はかない夢のようで、またリアルな作品世界を、いかにロマンとして紡ぎ出すか、深町幸男をはじめとするドラマを制作したスタッフは、よく知悉していたといえるだろう。

夢千代日記

夢千代日記

 

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2曲目。

くちづけ       いきものがかり 

くちづけ / いきものがかりの歌詞

くちづけ

くちづけ

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くちづけ

くちづけ

 本当は、真昼の月を聴いてほしかったのだが、動画が無いので、かわりにこれを選んだ。

これは「真昼の月」同様、山下穂尊君の書いた曲。

若い人にしては、艶のある、古風な言葉使いをする人だと感心している。

水野良樹君の詞の方が、どちらかといえば、今の若者にウケる王道だろうが、どちらも得難い個性だ。

次の曲。

我が良き友よ     かまやつひろし 

我が良き友よの歌詞 | かまやつひろし

上が2006 つま恋バージョン。

我が良き友よ

我が良き友よ

  • provided courtesy of iTunes

詞の中に「バンカラ」という、もはや死語になりつつある言葉が出てくる。

明治時代に出来た言葉で、「ハイカラ」に対抗して作られた造語のようだ。

バンカラ」とはどういうものか、といえば、弊衣破帽・マント・下駄・手拭といったスタイルで、戦前の旧制高等学校(現在は大学)の学生たちが青春を謳歌する象徴として、使われた言葉だ。

たとえば、この写真。

これは、旧制青森県立青森中学校(現在は高校)のサイトに掲載されている。

こういうのを「バンカラ気風」と呼んだ。

現代では、マンガ「嗚呼、花の応援団」ファッションといえば、わかりやすいだろうか。

大いに異なる点は、かつての旧制高等学校や旧制中学校の学生は、庶民からすれば、裕福な良家の子弟であり、エリート階級であったという事だ。

普通の庶民の暮らしでは、子どもたちの学費を払って進学させる事など思いもよらないのが、当たり前の時代だった。

ちなみに、この青森県立青森中学校の卒業生の中には、太宰治寺山修司がいる。

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「我が良き友よ」。

この曲は 1975年、吉田拓郎が、かまやつひろしに書き下ろして、大ヒットした。

意識的に時代錯誤な青春仕様の言葉を使って、昭和の時代にアナクロニズムな曲を書いた。

10代の少年であった私は、この曲を聴いて、あゝ、こういうのが青春なのか、と思ったものだ。ところが時代は受験戦争の最中で、これが時代錯誤と知ったのは、ずいぶん後の話だった。

www.dailymotion.com

我が良き友よ [EPレコード 7inch]

夢千代日記」の作者・早坂暁さんは、旧制松山高等学校の出身。

当時の学生生活の体験をもとに、小説ダウンタウン・ヒーローズを書いている。

この作品は、直木賞候補になり、薬師丸ひろ子中村橋之助柳葉敏郎の主演、山田洋次監督がメガホンを取り、映画化された。

旧制高等学校の青春、ストームや、デカンショ節などに興味のある方はもちろん、無い方にも、おすすめの青春小説の一冊。

ダウンタウン・ヒーローズ (新潮文庫)

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山田洋次監督で、渥美清がチョイ役で出演しているほか、若き日の坂上忍も出演している。

ダウンタウンヒーローズ              Amazon     [DVD]

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今回は、故・早坂暁の特集にもなっているので、「ドラマ人間模様」もうひとつの傑作「花へんろ」にも、少し触れておこう。

ドラマ「花へんろ」。

この作品は、早坂暁の実家、愛媛県松山市の、お遍路さんの通り道に面して立つ商店がドラマの舞台であり、早坂暁さんの自伝的要素が濃い作品である。

大正から昭和の敗戦期に至るまでの激動の時代を、地方の名家である一家族の視点から描き、当時の庶民感情を浮き彫りにした。

桃井かおり沢村貞子ほか、キャストは名優揃いで、制作スタッフも「夢千代日記」同様、NHK を代表する演出家・深町幸男が手がけた。

夢千代日記」とはひと味違った、めくるめくストーリー展開で、飽きさせる事が無い。

また、ナレーションを、早坂暁さんの若い頃からの親友・渥美清が務めているのも大きな魅力だ。

寅さんから離れた渥美清の芸達者ぶりも、懐かしく偲ばれる。

第4回向田邦子賞をはじめ、数々の賞をを受賞した、これもまた、おすすめの名作ドラマである。

またいつか、このドラマを観たら、あらためて紹介するかもしれない。

それほど私の愛好する作品だ。

花へんろ―風の昭和日記

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それでは、最後の曲。 

あがた森魚のデビュー曲にして、最大のヒット曲。

本日は、これを聴きながら、終わりです。

吉永小百合さんの平和への祈りが、天に届きますように。

赤色エレジー         あがた森魚

赤色エレジー - あがた森魚 - 歌詞

下は、ライブ・フルバージョン。

乙女の儚夢

乙女の儚夢

 

赤色エレジー[EPレコード 7inch]