MIDNIGHT HERO

デラシネのブログ。明日へむかって。

ロッカー・辻仁成の歌。未来へと続く、魂のメッセージ。

 本日は、ロッカー・辻仁成の歌と題してお送りします。

現在、パリで息子君と暮らしている辻仁成は、作家、映画監督としてよく知られていますが、初めはロッカーとして登場しました。
それをご存知の方も多いと思いますが、実際に曲を知っている人は少ないのではないか。
今の彼しか知らない人達にも、かつてのロッカー・辻仁成の歌を聴いて欲しい。
なぜなら、そこには永遠に滅びない詩があり、現代を生きる君にも通じる熱いメッセージがあるから。
では、1曲目。

GENTLE  LAND       ECHOES 

GENTLE LAND

GENTLE LAND

  • ECHOES
  • ロック
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私が辻仁成を語るには、まず私自身の事から始めなければならない。

10代の私は、自分の肉体と精神に、非常な弱さを感じていた。

自分がこの世の中で生きていけるのか、不安で一杯だった。

太宰治、曰く。

私は散りかけてゐる花瓣であつた。

すこしの風にもふるへをののいた。

人からどんな些細なさげすみを受けても死なん哉と悶えた。

「思い出」

そういう神経過敏な子供でありながら、他人事には非常に鈍感で無神経、そんなところがあった。

若き日に、私は自意識との闘いに疲れ果て、倦んでいた。

心を病み、精神科の思春期病棟のような病院にいた事もある。

そして、20代。

まだまだ、この世の中で生きて抜いていけるのか、不安でたまらない。

しかし、私には、幼い頃からの夢があった。

それは、小説家になりたい、という一事であった。

私は父親に向かい、東京へ行って作家を目指したい、と直談判に及んだ。

しかし、苦労人であった父は、私の本音を見抜いていた。

明日、生きていく自信さえ持ちえない自分が、唯一人、大都会の真ん中で生きていく事など、私自身が信じられなかったのだ。

父は、巧みに私の本心を刺した。

私には、言い返す言葉も信念も、持ち合わせがなかった。

その後、私は故郷の地で勤め人となって、実社会に出た。

勤めながらでも、文学の修業は出来ると思ったのだ。

そして、 2年余りが過ぎた頃、私はひとつの小説に出会った。

それが辻仁成の「ピアニシモ」だった。 

2曲目。

カッティング・エッジ       ECHOES 

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カッティング・エッジ

カッティング・エッジ

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  • ロック
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HEART EDGE

HEART EDGE

 
辻がエコーズを中心に活動した時期は、私もまた、自分自身の世界を築こうと必死だった。
その頃、私は音楽を意識的に遠ざけていた。
文学の世界に、軸足を置くためだった。
辻の処女作「ピアニシモ」が「すばる文学賞」を受賞し、世に出たのは、そんな時だった。
それを読んだとき、私の中に衝撃が走った。
私の中に鬱屈していた、やり場のないエネルギーを一気に爆発させる、新しい感覚がそこにはあった。
描かれているのは、いつの時代にもある、普遍的でスタンダードな、青春期の自我の確立や、都会の中の孤独というテーマ。
わかりやすく言えば、それだけの、身も蓋もない事になってしまうが、その時代には、現代を生きる若者達が心から共鳴できる、まっとうな青春文学が存在しなかった。
本を手に取り、経歴を見れば、著者は現役のロックミュージシャンであると知った。
以来、私は辻の小説とエコーズの楽曲にどっぷり浸かる事になる。
山田太一さんの言われるように、言語芸術が、現代の若者に与える影響力を失ってきている。
私は辻の小説に、今の若者達へとダイレクトに繋がる、音楽から言語芸術への架け橋となる可能性を見たのだった。
ピアニシモ (集英社文庫)

ピアニシモ (集英社文庫)

 

 この小説は、エコーズの曲を、そのまま文学に具現化したような作品だった。

 

私がロックバンド・エコーズを知ったのは、辻の「ピアニシモ」を読んでから。

しかも、小説を知り、音楽を聴き始めるタイムラグがあったゆえに、私がエコーズの楽曲にハマりだしたときには、エコーズは解散してしまっていた。
 現代の情報化社会から見れば、秒殺で情報をキャッチする事は、とてつもなく困難な時代だった。
私は解散したバンドの活動歴や当時の世評について、知るところは何もなかった。
その結果、エコーズの音楽は、私の主観の中で純粋培養され、私の血肉となっていった。
私が惹きつけられたのは、その音楽性もさることながら、その時代への批判精神と、常に時代を先取りしているという、辻のみなぎる矜恃だった。
 
3曲目。
こんなバラードの傑作もある。

友情        ECHOES 

友情

友情

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HURTS

HURTS

 

 エコーズのアルバムを1作目から追ってゆくと、最初の「WELCOME TO THE LOST CHILD CLUB」、2枚目の「HEART EDGE」と、楽曲のクオリティは最初から非常に高いと感じる。

詞の世界もサウンドも前衛的であり、メッセージ性が極めて濃い楽曲が並ぶ。

中でも「アフタースクールコミュニケーション」は、ハッカーや引きこもりなど、未来を予見する言葉が散りばめられた、初期のエコーズを象徴する楽曲として、語られることが多い。

デビューアルバムのジャケットの帯に書かれたキャッチ・コピーには、「諦めてしまう前に オレ達と組まないか」とあり、「恐るべき子供達へ」という曲の中でも、「ガラスを割る前に オレ達と組まないか」という詞がリフレインされる。

これは明らかに、同じレーベルに所属していた尾崎豊の「十五の夜」を意識したものだ。

80年代にあって、尾崎にはない「連帯」という異なる抵抗の枠組みを、バンドのステイトメントとして登場した彼らが、異色の存在であったことは想像に難くない。

メッセージ性を色濃く主張するロックバンドとしての立ち位置は、甲斐バンドレベッカ尾崎豊も同様だったが、時代を先取りして行く、敢えてメジャー志向を拒否する姿勢が、エコーズというバンドの特異性を、際立たせていたと言える。

4曲目。

Mr.Children桜井和寿が、エコーズの曲の中でも特に影響を受けたとされる佳曲。

SOME ONE LIKE YOU       ECHOES 

SOMEONE LIKE YOU / ECHOESの歌詞 |『ROCK LYRIC』

SOMEONE LIKE YOU (New Version)

SOMEONE LIKE YOU (New Version)

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GOLD WATER The Best of ECHOES

GOLD WATER The Best of ECHOES

 

この曲は、3枚目のアルバム「No Kidding」に収録されているが、解散を前にリリースしたベストアルバム「GOLD WATER」にセルフカバーが新録で入っている。

辻は、5作目のアルバム「HURTS」あたりから、ヴォーカリストとして急成長を遂げた。

初期のアルバムの難点を挙げるとすれば、辻のヴォーカルの生硬さと音の全体的な軽さにあったと思うが、辻の発声といいサウンドの重量感といい、この新録バージョンは圧倒的に素晴らしい出来映えだ。

このベストアルバムには、そのほか、1作目から3作目までに収録の「JACK」、「BETWEEN」がニューバージョンで収録されており、ロック・ヴォーカリストとして、辻はまるで別人のように変貌した事が窺える。

アルバムも、新作のリリースごとに完成度は高まり、それまでのエッセンスにオーディエンスへのダイレクトなメッセージを発信する、骨太な楽曲へとモデルチェンジを重ねてゆく。

惜しむらくは、バンドが円熟期に入り、 ピークに達したと同時に解散してしまったのが残念でならない。

しかし、それは作家・辻仁成の誕生とともに、そうなりゆく宿命にあったのだとしか、今は言い様がない。

5曲目。 

Warrior        ECHOES    

これは、1991年の日比谷野音、ラストライブのオープニングナンバー。

 

口笛を合図に攻撃が加えられた

コンクリートジャングルの Warrior

あくびはエスケイプ くしゃみはシュプレヒコール

俺たちの合図さ Warriors

Warriors  Warriors  Warriors  Insane

 

落ちこぼれの俺たちは 失業者みたいなものさ

解雇される心配もないよ

組合のバッジを付けた ヒステリックな教師たちへ

教えてやろう Warriors

Warriors  Warriors  Warriors  Insane

詞・曲 : 辻仁成 

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 ECHOES on the MOVE | Sony Music Shop

20代後半、エコーズの曲は、私の夢の伴走者であった。

その渇いたメロディと詞は、私の10代の経験を彷彿させ、それを文学に昇華させ得ることに希望を与えてくれた。

それが、私にとっての辻の小説作品でもあった。

今、あれから30年近い時を経て、そのデビュー作のページをめくってみると、そこには気恥ずかしいほど、自己愛や自己憐憫を、そのテキストから読み取っていた自分が透けて見える。

結局のところ、何を媒体にしたところで、人はその中に今生きている自分自身を発見するに過ぎない。

もしそこに、この全宇宙を見晴るかす才能があり得たとしても、自己を通すことでしか、その存在を知る事は出来ないのだ。

誰にも知られないところで、私はひそかに、エコーズという解散してしまったバンド、辻仁成という表現者と、グルになって、共闘した。

この磁場でなら、きっと存在できる。闘える。

私は、生まれて初めて、世の中に存在していける、との確信を得る事ができた。

このあと、この世の中でどんな事に遭遇しようと、私は自分の手中にあるペンで、あらゆる負の出来事をプラスに変え、自分というものの存在意義を再認識することができる。

勝つ事は出来ないまでも、生き続ける事はできる。

たしかに、そう思ったのだった。

デラシネ        ECHOES 

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詞・曲 : 辻仁成

デラシネ

デラシネ

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Dear Friend

Dear Friend

 

エコーズのアルバム中、私が最も愛する6th アルバム 。ヒット曲「ZOO」や「デラシネ」などを収録。

 

私自身の、内なる辻仁成との出会いが、その後の私の、新たな闘いの始まりとなった。

敵は、内外に大勢いた。

芸術家として人に抜きん出、ミューズの愛を独り占めし、高みに昇りつめようとする異端児には、必ず襲い掛かる、孤独と不安、そして恐怖。

身を落ち着ける場所のない、根無し草の心。

いびつな存在として浴びせられる、世間の辛辣な悪態や轟く罵声。

いくつもいくつも現れては消える、栄光という名のまぼろし

それらをねじ伏せて、歩みを進めて行く事の困難な所行。

それからの私は、一般のモラルに従って生きる人々の感じようもない、目の眩むような歓喜や陶酔にも遭遇したが、一度転落すると這い上がりようのない、挫折と失意をも味わう事になった。

それが、真理という名の悪魔に魂を売ったドクトル・ファウスト叙事詩や、フランス中世の盗賊にして大詩人、フランソワ・ヴィヨンの捧げるがごとき遺言書となるのだ。

それを語るのは、私自身にとってあまりに残酷だが、それが芸術家の宿命である。

しかし、ここがその場所ではない事は確かだ。

私は、作品によって、読者諸氏に自己の身上書を提示するよりほかに道はない。

いつの日か、それが叶えられん事を。

私は祈り続けるばかりだ。

Nightstalking in the Urban Jungle!